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【パニック障害 体験記 #10 】都合の良い言い訳を探して

珍しく早めに退勤したはずなのに何だか悪い気がするのは、このブラック化してしまった職場環境に慣れてしまったからだろうか。

 

18時すぎに退勤するのは久しぶりだ。まだ6月とはいえ明るい時間帯に見る職場周辺の景色も西に傾いている夕陽を見ると、夕方ってこんなに明るかったんだとしみじみ感じた。

 

不思議なめまいや吐き気など昨日に引き続き起こったが、理由も分からず回復していく。

 

回復しているからまだいいが、何で体調が悪くなるのか相変わらず分からないでいる。いったい何をしたら吐き気やめまいがやってくるのだろう。原因が分かれば対処できるが、原因が分からない今は恐怖でしかない。

 

いつもは19時以降に帰ることが多いが今日はまだ18時過ぎだ。

 

田舎とは言え普段は帰宅ラッシュに巻き込まれる時間に帰っていなかった僕は、久しぶりに感じる夕方の通勤ラッシュを何故か嬉しそうに感じていた。

 

いつもより10分ほど遅く自宅に着いた。

 

住んでいるアパートは新婚夫婦や家を建てるために借りている人が多く、平均年齢も比較的若い人が多い。みんな朝の出勤は同じぐらいの時間帯だが、帰ってくる時間は圧倒的に僕たち夫婦が遅い。みんな恵まれている職場なのか分からないが羨ましい。

 

いつも帰ってきた時には他の住居の方の車で駐車場は埋め尽くされていたが、今日は僕の車だけが停まっている。

 

たまたま通りかかったご近所さんに挨拶をしながら家へと向って行った。

 

鍵を開け家に入ると、レースのカーテン越しに見える夕陽が、リビングを幻想的な空間に映していた。きっといつものことだろうが、そんな時間に帰宅することがなかった僕には見たことのない景色だった。

 

「きれいだ…」

 

不思議な感情がこみ上げてきた。

 

たかが、夕陽が差し込んだリビングを見て「きれいだ」と思う感情は普通じゃない。

 

僕はこんなに感動から距離をとって生きてきたのだろうか。自分はどちらかと言うと感動屋だと思っていた。テレビで子どもが出ると涙し、奇跡の救出みたいなのを見れば大感動して泣いていた。

 

そんな僕が、平日の夕方にレース越しの夕陽を見て感動を覚えるなんて、やっぱり疲れているとしか思えなかった。

 

部屋着に着替え、リビングでテレビをつけるが面白い番組はやっていない。リモコンで色々変えるがどこも同じ。スマホをいじってゲームをしてみたりするが続かない。

 

そう…、分かっている。

 

分かっているけど怖くてできないことがあった。それはパソコンで昨日と今日、僕の体に起こった謎の体調不良について調べることだった。

 

会社を出るときは家に帰ってこの体調不良について調べようと思っていたが、いざ調べられる環境になると怖くて調べるのに躊躇してしまう。

 

今は体調に変化なく、いたって普段通りだから別に調べなくてもいい気がする。確かに昨日と今日同じような原因不明の謎のめまいや吐き気に襲われたが、実際に治っているし、そもそも体調不良になっている時間の方が一日を通じて短いわけだし。

 

自分の中で思いつく調べなくていい理由を、片っ端から並べてみた。

 

「今は大丈夫だし、こういったことは体調不良になった時に調べたら…」

 

本当にヤバかったら体調不良は一時的じゃないはずだし、現に今は体調はいつも通りでむしろ早めに退勤したことで気持ちもいい。きっと疲れが溜まってて一時的に体調が悪くなっただけに違いない。

 

そう自分にいい気利かせ、調べることを止めた自分の判断を必死に正当化していた。

 

都合の良い言い訳を探して調べる理由を目の前からなくしてしまった。

 

また今度同じようなことが起きたら調べよう。きっとその時でも遅くないはず。

 

この判断が完全に間違っているなんて、当時はまだ思いもしていなかった。嫌なことは忘れた頃にやってくる。そんな言葉があるように、まさかあんな場所でまた地獄のような苦しみを味わうことになるなんて…

 

 

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