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【パニック障害 体験記 #23】精神保健福祉士との出会い

番号が呼ばれるまでは吐き気との戦いだった。

 

パニック障害を経験したことのない人は分からないと思うが、パニック障害にとって”自分の意思で外に出られない環境”は恐怖でしかない。

 

飲食店・会議室・電車・飛行機・美容院…

 

これらに共通しているのは、自分の意思でその場を離れることが難しいこと。

会議ではそう簡単に外へ出るのは難しく、電車や飛行機も乗ってしまうと降りれない。美容院もカットが始まると簡単には出られない。

 

人によって飲食店は大丈夫と言う人もいるが、実際お店で注文をしてしまうと食べ終わるまで外に出るのは難しい。そう考えると飲食店で気分が悪くなってしまったらどうしよう?という不安が付きまとうことになる。

 

何度も波のように吐き気が襲ってくるが、目をつぶって耐える。

 

その場を離れれば楽になるかもしれないが、理解してくれている奥さんが横に座っていれば何とか乗り切れるだろうと思った。

しかし、現実はそう簡単なものでなく容赦なく吐き気が襲ってくる。

 

僕は奥さんに目配せをすると席を外して外へ向かった。

 

多くの人が来院してくる中で僕は人の流れに逆らって外へ出て行った。変な目で見られたくない一心で平静を装って早歩きで向かう。

 

病院の外へ出ると先ほどまでの息苦しさが一挙に解消され、呼吸も徐々に戻ってくるのが自分でもよく分かった。しかし、次に僕に訪れたのは病院内に戻ることへの恐怖。

 

いわゆる”広場恐怖症”というやつだ。

 

一度でもパニック発作が生じた場所はトラウマとして恐怖の対象になってしまい、次にその場所へ行くことが怖くて行けなくなってしまう。

 

また同じように吐き気やめまいが襲ってくるのではないか…と。ケースは少し違うが犯罪被害者の人が被害にあった場所に行くのが怖いのと似ている。

 

また、全く同じ場所でなくてもシチュエーションが似ている場所に行くのが怖くなってしまうのも広場恐怖症の厄介なところ。

 

病院内に再度向かうことに躊躇していたが、いつ僕の順番が呼ばれるか分からないことから意を決して戻ることにした。大きく深呼吸をして呼吸を整える。

 

来院者と一緒に入りゆっくりと歩みを進める。無駄な抵抗かもしれないが、病院内に慣れるための僕なりの試みだ。

 

奥さんの横に座ると小さい声で

 

「大丈夫?」

 

と聞かれるも、僕は無言でうなずくことしかできなかった。

 

15分ほどして、僕の番号が呼ばれ順番が回ってきた。

 

席を立ち緊張しながら小部屋へと向かう。

 

小部屋は机が一つあるだけの小さな部屋で2畳ほどの広さだった。看護師の女性から椅子に座るよう促された僕は力なく座った。

 

「今日はどのようなことで来院されましたか?」

 

そう聞かれるもすぐに答えることができず、少し時間を空けてから

 

「うまく言えないんですけど最近調子が悪く、1ヶ月前の研修で急に気分が悪くなって同じことが昨日の会議でも起こって大変でした。めまいや吐き気も酷いし一体何なのか…」

 

1か月前に初めて自身に起こった体調不良と、昨日同じような症状が会議でも起こったことを細かく説明して伝えた。

 

メモをしながら僕の話を聞いていた担当の人は、何かを確信したように一言。

 

「専門の科があるんですがどうされますか?」

 

”専門の科”としか言わないので、いったい何科なのかよく分からない。おそらく”あの科”だろうと思いつつも、ハッキリと知りたかった僕は

 

「それって何科ですか?」

 

担当の人が僕に気を使っているのはすぐに分かったが聞くしかなかった。

すると、ひと呼吸空けて少し小さめな声で

 

「精神科です」

 

やっぱりか…と言うか、それが目当てだったはずなのに改めて精神科と言う言葉を聞くとショックだった。きっと担当の人も精神科という言葉を初めて聞くだろう患者に伝えるのは簡単ではないのだろう。

 

僕は、一瞬ショックを受けたが初めからそれが目的だったので

 

「お願いします」

 

と 躊躇なく答えた。

 

すると、少しホッとしたような顔をした担当の人は精神科のある場所や、その前に少しやることがある旨を手寧に教えてくれた。最後に

 

「今からより詳細を聞くために担当の者が来るので少しお待ちください」

 

と言われ、しばらく待っていると穏やかで優しさを絵に描いたような女性が現れた。

 

他の看護師とは違い限りなく私服に近いラフな格好で、笑顔が印象的な人だった。

僕の隣に来ると膝をついて一言

 

「精神保健福祉士の〇〇です。今からお話しを聞かせていただきますので、こちらに付いてきてもらっていいですか?」

 

言葉の端々が丸く、全く尖った印象のない話し方。きっとこの人は人の話を聞くのが上手なんだろうなと思える感じだった。

 

その精神保健福祉士の人に促され、別室に向かって廊下を歩いて行った。

 

今まで絶望としか思えない状況だったが、この人に全てを話すと解決策が出てくるんじゃないかという希望が出てきて、先程までしていた吐き気が嘘のように思えた。

 

 

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